トラネキサム酸(トランサミン)は喉の痛みや風邪に効くのか?
- 10 時間前
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喉の痛みに「トラネキサム酸」は本当に効くのか?
50年目の真実と最新研究が明かした衝撃の結果

1. 日常的な「喉の痛み」と定番の処方薬への問いかけ
風邪をひいて喉が激しく痛むとき、日本の医療現場で非常に高い頻度で処方されるのが「トラネキサム酸」です。患者さんも「喉の腫れを抑える定番の薬」として深い信頼を寄せており、処方箋にその名があるだけで安心感を覚える方も少なくないでしょう。
しかし、長年「効くのが当たり前」とされてきたこの処方の根拠に対して、現代の厳格な科学の光が当てられました。最新の臨床研究が提示したのは、これまでの常識が非常識だったことを裏付けるなデータだったのです。

結果:
トラネキサム酸はプラセボと比較して、急性上気道炎に伴う咽頭痛を有意に改善しませんでした。内服2時間後に咽頭痛が日常生活に中等度以上の支障を来している患者の割合は、トラネキサム酸群で41.2%、プラセボ群で47.1%と有意差はなかった(P=1.00)。
2. 衝撃の事実1:最新の臨床試験では「プラセボ(偽薬)」と差がなかった
2023年から2025年にかけて実施された最新のランダム化比較試験(RCT)の結果が、学術誌『Journal of General and Family Medicine』に掲載されました(Ishimaru N, et al. 2026)。この研究では、喉の痛みを訴える18歳から65歳の急性上気道炎(風邪)の患者を対象に、トラネキサム酸(50%製剤1g)を服用する群と、有効成分を含まないプラセボ(乳糖1g)を服用する群に分け、その効果を厳密に比較しました。
特筆すべきは、薬の効果を判定するタイミングです。トラネキサム酸の血中濃度がピークに達する時間(最高血中濃度到達時間:Tmax)が約2時間であることから、最も効果が現れやすい「服用2時間後」の痛みの変化を評価しました。

その結果、主要評価項目である「服用2時間後に喉の痛みが日常生活に中等度以上の支障を来している患者の割合」は以下の通りとなりました。
トラネキサム酸群:41.2% プラセボ群:47.1%

統計学的な解析(p=1.00)において、両者の間に有意な差は認められませんでした。また、痛みの強さを数値化するVASスコアの変化についても、トラネキサム酸群で17.3、プラセボ群で13.1の低下が見られましたが、こちらも統計学的な有意差はありませんでした(p=0.49)。

分析・考察:
長年、臨床現場で絶大な信頼を置かれてきた薬が、最も効果を発揮するはずの時間帯において、実は「乳糖(砂糖の一種)」を飲んだグループと大差ない結果しか出せなかったという事実が改めて示されました。
私たちが感じていた効果の正体は、薬の成分による作用というよりも、時間の経過による自然治癒や、薬を飲んだことによる心理的な安心感(プラセボ効果)であった可能性を強く示唆しています。

3. 衝撃の事実2:私たちが信じていた根拠は「50年前の不完全なデータ」だった
なぜ、これほど明確な証拠がないまま、トラネキサム酸は「喉の薬」の代表格として定着したのでしょうか。その歴史的な根拠を遡ると、1969年に発表された宮城氏らによる研究にたどり着きます。
この50年以上前の研究では、トラネキサム酸群の有効率が52.4%であったのに対し、プラセボ群は26.2%と報告され、当時は効果が期待できるのというように結論づけられました。 しかし、現代の科学的視点でこのデータを精査すると、多くのデータの不備が浮き彫りになり、感染症を専門とする医師達の間では、この効果は怪しいと考えており、喉の痛みや炎症を抑える効果に懐疑的でした。


分析・考察:
医学の世界においても、一度「定番」として定着した慣習は、科学的な検証が不十分なまま継承されてしまうことがあります。「昔から使われているから」「みんなが処方しているから」という慣習が、必ずしも現代の厳格なエビデンス(科学的根拠)に裏打ちされているわけではないという事実は、現代医療における盲点と言えるでしょう。
最新の研究は、喉の痛みに対するトラネキサム酸の効果がないことを改めて指摘されたことになります。50年前の不十分なデータを根拠になんとなく処方され続けてきたこの薬が、現代の厳密な試験では偽薬を明確に上回ることができなかったという事実は、臨床医も患者も真摯に受け止める必要があります。
あなたのその「トラネキサム酸」効果がありますか?
[参考文献]
1)宮城平 咽喉頭・口腔疾患におけるTranexamic acid(Transamine)の使用経験 二重盲検法による 臨牀と研究 1969;46:243-5.
2)N. Ishimaru, et al. “ Tranexamic Acid for Acute Upper Respiratory Tract Infection-Associated Sore Throat Pain: A Randomized Controlled Trial,” Journal of General and Family Medicine 27, no. 1 (2026): e70097, https://doi.org/10.1002/jgf2.70097. (急性上気道炎に伴う咽頭痛に対するトラネキサム酸への効果:ランダム化比較試験)」



