破傷風の予防法&キズの対応法
- feverworkup
- 8月13日
- 読了時間: 4分
更新日:8月16日
皮膚外傷後の感染予防として、忘れがちな重症な感染症に【破傷風】があります。 花壇の世話、家庭菜園、畑や田んぼ仕事、日常でのケガ・ヤケド、動物咬傷、ヒトでの喧嘩傷などで忘れちゃいけないのが【破傷風】。そして、ワクチンで予防できるのが【破傷風】であり、抗菌薬(抗生物質)では予防できないのが【破傷風】です。
・酸素の多い環境では、増殖できない偏性嫌気性グラム有芽胞桿菌
・芽胞の形で土壌中の存在
・芽胞は熱や乾燥に非常に強い
土壌から、非常に小さいキズからでも侵入し、キズが閉鎖することで酸素の少ない環境が形成され、芽胞の状態から発芽して増殖。
強力な外毒素である【破傷風毒素 tetanospasmin】による中毒症を発症し、痙攣や呼吸筋麻痺を起こし、適切に対応しないと死亡してしまう感染症。
日本で年間100例前後の発症し、地震/水害/土砂崩れなどの自然災害などが起こると被災者やサポート/支援者などの発症がグンっと増える。
きちんと対応すれば死亡率は10%未満。
初発症状では、第2期の開口障害が最も多く、第1期では、全身倦怠感/肩こり/頭が重いなどの不定愁訴があり、第2期の開口障害、嚥下障害、発語障害、痙笑などで疑われる形となることが多いとされます。
第3期では、全身痙攣、後弓反張、高血圧、高体温、頻脈などの自律神経障害、嚥下性肺炎などがみられ、意識がはっきりしている中、激痛で非常につらい状態となります。
第4期の回復期では、痙攣は消失し、筋の緊張のみ残存。
治療をしても2週間は症状が悪化し、症状は4~6週間持続し、時に後遺症を残す。
診断には、破傷風菌の証明がベストであるが、創部から培養で検出されるのは30%程度。
25%では、創部もはっきりしないことも多く、臨床経過で診断されることも多い感染症。
さて、そんな【破傷風】は、小さいキズから非常に少ない毒素で発症し得ます。
生後2か月から始まる3種混合/4種混合/5種混合ワクチンの1か月ごとの3回接種の中に破傷風ワクチンが含まれており、日本では、11歳の時の2種混合の時にさらに4回目の接種が定期接種になっています。(百日咳を加えたいときには、この際に自費で3種混合ワクチンを接種とする場合もあります。)
一般的には、【破傷風】発症予防のためには、最後の接種から10年後には抗体が下がってくるまでその頃に追加接種が必要といわれています。
そんなキズ/ケガ/ヤケドで意識をしないといけない、忘れちゃいけない【破傷風】予防策。
医師の中でも破傷風トキソイドや免疫グロブリンの使い方を知らないままに昔ながらの昭和時代の創処置(消毒&ガーゼ&なんとなく抗菌薬)をしている外科系医師チラホラと・・・。
しっかりとアップデートしていきましょう!


破傷風トキソイドワクチンが、2025年初夏に一時期、国内の市場になくなってしまいました。この時、どうするだ~という騒ぎになりました。日本感染症学会でも代替ワクチンに
関する情報を緊急対応として発信してくれています。
破傷風トキソイド供給不足への対応について https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/gakkai_toxoid_250730.pdf もともと外傷対応をしている医療機関のほとんどが米国も日本も破傷風トキソイドを接種をされていない現状のあり、知識を日々アップデートしている医療機関でのみ実施されているというリアルな現状の中、家庭菜園や擦り傷や動物咬傷などでも発症し得る感染症という割には国内発症が年間100名程度(震災や水害時などでは増加)であり、破傷風を診たことのある医師の少なさなどに???と違和感を感じていました。
この時に改めて、日々の疑問と破傷風トキソイドワクチンなどをどのように運用していこうと考える中、色々文献などを調べたところ、下記の論文で「なるほど!そうかもしれない」と腑に落ちました。
それともとに簡略的にまとめてみました。



それともとに破傷風トキソイドが市場にない場合、接種希望のない場合なども含め、リスクとのバランスでの【破傷風予防対応シート】を作成してみました。

現時点では、日本などの一部の諸外国のスタンスは、10年ごとにブースター接種を推奨されていますが、今後は、これでもいいのかもしれません。
この論文を考慮すると年間100名程度しか破傷風発症が日本でないということと臨床現場の実感とも一致します。 医学は科学です。ひっくりかえることもあります。今後、やはり10年ごとでいいのか、 定期的なブースターをして、英国のように総計5回の接種とすれば、追加ブースターが
必要ないのか、日々、知識をアップデートをしていく必要性がありますね。
(日本では現在、乳児期:初回:3回+1期追加、学童期11歳:1回=総計5回)


