百日咳:曝露後予防投与
- feverworkup
- 7月29日
- 読了時間: 3分
百日咳患者の家庭内接触者/濃厚接触者に曝露後予防投与(PEP:post-exposure prophylaxis)により2次感染率をワクチン接種歴に関わらず50~80%の感染率
を低下させます。
特に乳児や妊娠後期の女性との接触がある場合には、その対象者への2~3週間以内(21日)の適切/迅速な抗菌薬予防投与が重要となります。
●感染力が非常に高いカタル期(発症から2~3週間以内:21日)がキーとなります!
1.予防抗菌薬(PEP)が必要な根拠
妊婦(特に第3三半期/後期:妊娠28週0日から出産)が百日咳に罹患した場合、これから生まれてくる新生児へ感染し、重症化や死亡例となる危険性が高いため、そのリスクを最小限にする目的で予防抗菌薬(PEP)は重要になります。
2. 予防抗菌薬(PEP)のより推奨される対象者とその背景
・1:12か月未満の乳児
➡重症化リスクが最も高い
・2:妊婦(特に第3三半期/後期:妊娠28週0日から出産)
➡出生直後の新生児へ感染を引き起こすリスクが高い
・3:免疫不全や喘息などの呼吸器系基礎疾患を有する人
➡重篤になりやすい
・4:上記のハイリスク群と濃厚接触する家族/同居人/医療従事者/保育施設勤務etcの人
➡感染拡大のリスクになりやすい
● 上記の対象者は、咳の発症から 21日間、または曝露後予防投与(PEP)開始後5日間は 勤務から除外することを推奨。
すでに咳症状が現れている場合や発症から21日以上経過した場合、PEPの効果は期待できません。
CDC: Pertussis(Whooping Cough), Postexposure Antimicrobial Prophylaxis.

【表の注釈】
*1:保険適応外ですが「百日咳」に対して処方・使用した場合、社会保険診療報酬支払基金では当該使用事例を審査上認めることになっています。
*2:新生児における肥厚性幽門狭窄のリスク/有害事象/安全性は、エリスロマイシン>クラリスロマイシン>>アジスロマイシン。
*3:新生児黄疸の有無/ビリルビンの数値をみて救命のため個別に使用を検討します。
*4:思春期・成人:百日咳での保険適応がありませんが、傷病名「気管支炎/肺炎」で処方可能です。
*5:小児:百日咳での保険適応がありませんが、傷病名「肺炎」で処方可能です。
*6:米国での初日1回500mg、2~4日目1回250mg 4日間の推奨投与とは異なりますが、PK-PD理論上は同等の効果が期待できると考えられます。
*7:マクロライド系抗菌薬耐性百日咳が想定される場合には、ST合剤を第一選択とした処方を検討します。
Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases, 33rd ed
*8:重症症例の場合には、アジスロマイシンとST合剤の併用投与も検討します。
・Kimberlin DW, Banerjee R, Barnett ED, et al. Red Book 2024-2027, 33rd ed, Report of theCommittee on Infectious Diseases: 656, 2024.
・「百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について」 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会 2025 年 3 月 29 日