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百日咳が全国的に流行しています!

更新日:7月25日

1. 百日咳ってどんな病気?

・百日咳は「ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)」という細菌が原因の感染症です。

・主に咳が長く続くのが特徴で特に小さい子どもや赤ちゃんがかかると重症になりやすく、死亡してしまうこともあります。

感染力がとても強く、1人の患者から16~21人にうつすとされています。

 

2. どんな症状が出るの?

・最初は普通の風邪のような症状(鼻水・くしゃみ・軽い咳)から始まります。

・2週間くらいすると、激しい咳が何度も続き、咳の後に「ヒュー」という音(笛声)が出

たり、咳き込んだ後に吐いてしまうこともあります。

高熱は、あまりでません

・大人やワクチンをしっかりと受けた子どもでは、症状が軽く、ただ咳が長引くだけのことも多いです。

➡注:日本の現在の定期接種では、不十分で少なくとも11歳で追加接種、できれば就学時前にも追加接種が理想です。

 

3. どうやってうつるの?

・百日咳は、咳やくしゃみのしぶき(飛沫)や、手についた菌が口や鼻に入ることでうつります。

・特に家族の中でうつることが多いです。

➡百日咳にかかった人が、ワクチン未接種の同居家族に感染させる可能性は、80~90%と非常に高いとされています。

・百日咳に感染してから発病するまでの期間は、約5~10日間(最長で3週間)です。

 

4. どんな時に百日咳を疑うの?

・咳が1週間以上続き、どんどんひどくなるとき

・咳が連続して出て、顔が赤くなったり涙が出たりする

・咳の後に吐いてしまう

・家族や周りに百日咳の人がいるとき


5.発症しやすい年齢層は?

・ 小児が中心であり、母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が十分でなく、乳児期早期から罹患する可能性あり。特に百日咳含有のワクチン未接種である生後6カ月未満の乳児は重症化しやすく、死亡者の大半を占めます。

・また、百日咳含有のワクチン(3/4/5種混合ワクチン)未接種の人や接種後年数が経過し免疫が減衰した人(5~12年:1期追加接種後をきちんと接種していると6~12歳以降)での発病がみられることが多くなります。

・成人では、典型的な咳を示さず軽症で見逃されやすいものの菌の排出があるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源として注意が必要になります。

・残念ながら、現在のワクチンにより終生免疫は獲得されないとされています。


6. どうやって診断するの?

・発症1週間(~10日)以内の早期の場合:イムノクロマト法による抗原定性検査キット

 ➡クリニックで実施し、15分で結果判定

・発症1週間(~10日)以降の場合:LAMP法(PCR検査の1つ)

 ➡クリニックで実施し、検査センターに提出、3日間で結果判定


7. 治療はどうするの?

・百日咳の治療は、主に「マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)」を使いますが

発症して、2~3週間以内に処方することが重要となります。

・最近はこの薬が効かない「耐性菌」が増えてきているためST合剤の選択を考慮します。

重症感染症の場合(入院管理要)には、アジスロマイシンとの併用投与も検討します。

・発症から2~3週間以内に薬を飲むと、周りへの感染を防ぐ効果があります。

(症状が軽くなることも)

薬を飲み始めて5日間は、学校や仕事を休む必要があります

・適切な時期(発症して2~3週間以内:カタル期)の時期に適切な抗菌薬を飲まないと

カタル期の時期は、周りへの感染が強いため、学校や仕事を休む必要があります。

 

8. 予防するには?

予防接種(ワクチン)がとても大切です。

・日本では、赤ちゃんの時に「3種混合(DPT)」「4種混合」「5種混合」ワクチンとして定期接種があります。

・5~12年で免疫が弱くなるため、追加の接種も大切です。小学校入学前と11歳の2種混合定期接種の際に「3種混合(DPT)」の任意接種の追加が必要となります。

➡当院では、DTの予約を受ける際に、保護者の方に説明提案し、希望同意のある方には

2種混合ワクチンの代わりに任意接種で実施しています。

・大人や妊婦さん、赤ちゃんの家族もワクチンを受けることで、赤ちゃんを守る「コクーン戦略」が推奨されています。

 

9. 学校や仕事はいつまで休むの?

学校保健安全法「特有の咳が消えるまで」または「5日間の適切な抗菌薬治療が終わるまで」出席停止です。適切なタイミングで適切な抗菌薬を処方されていなかった場合には、発症後2週間は特に感染リスクがあります。

・大人も、咳が強い間や感染症に知識のある医師の指示された期間は出勤を控えましょう。


10.どこに受診すれば、診断してもらえますか?

・どの医療機関、標榜科というよりも普段、乳幼児~成人までの感染症診療に対応し、新しい医学知識をアップデートし続けている医師に受診して、ご相談ください。


医師の見極めのコツは、

・事前の詳細な症状や背景を聞く問診が丁寧であり、診察をきちんと行い、疑う病気を説明し、検査の目的とその結果の解釈の説明、診断名を明らかにし、処方する薬の目的をわかりやすく説明してくれるような医師であれば、医療機関の規模/標榜科はあまり関係ありません。

・採血の結果だけで細菌感染やウイルス感染を見極めることはできません。その説明対応がある場合には、感染症の知識のアップデートをされておらず、苦手な先生かもしれません。


【ポイントまとめ】

・百日咳は強い感染力を持つ咳の病気。

 ワクチンで予防できるが、免疫は時間とともに弱くなる。

・咳が1週間以上長引くときは、百日咳も疑い、早めの受診/検査が大切。

・早期の適切な薬の投与で周りへの感染を防げる。

・予防接種と、家族全体の免疫で赤ちゃんを守ることが重要です。


年代

感染リスク

重症化リスク

備考

生後6か月未満

非常に高い

非常に高い

免疫なし・ワクチン未接種

1歳未満

高い

高い

予防接種未完了

5歳以上10歳未満

高い

中等度

免疫低下により発症が増加

小学校高学年~中学生

高い

低~中等度

免疫減弱で再感染が多い

青年・成人

中等度

低い

症状軽く感染源となりやすい




 
 

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