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蕁麻疹の正しい治療法/学びの治療

蕁麻疹に関する意外な7つの真実

 

真実①:「原因不明」は異常ではない。むしろ、それが最も多いケース

蕁麻疹で医療機関を受診するケースで最も多いのが、特定の原因が見つからない「特発性(とくはつせい)の蕁麻疹」です。

原因がわからないと、何か重い病気が隠れているのではと不安になるお気持ちはよく分かります。しかし、蕁麻疹の診療においては、原因不明は「異常」ではなく「標準」なのです。ガイドラインによれば、特定の誘因なく自発的に症状が現れる「特発性の蕁麻疹(特定の原因がないタイプ)」が最も多く、このタイプでは「基本的に病態の全体像を説明し得る原因は特定不能」と明記されています。

つまり、原因探しに躍起になって自分を責めたり、食生活を過度に制限したりする必要はないのです。これは、多くの患者さんの心の負担を軽くする、非常に重要な事実です。

蕁麻疹におけるマスト細胞活性化の機序としては I 型アレルギーが広く知られているが,実際には原因として特定の抗原を同定できることは少ない.

 

真実②:「アレルギー」だけではない。こする、冷やす、温める…物理的な刺激も引き金になる。

蕁麻疹の原因は、食物や薬剤などによるアレルギー反応だけではありません。特定の物理的な刺激によって症状が誘発される「刺激誘発型の蕁麻疹」というカテゴリーが存在します。

これはアレルギー体質とは関係なく、誰にでも起こりうるものです。具体的な例としては、以下のようなものがあります。

• 機械性蕁麻疹: 皮膚をこすったり、ひっかいたりする機械的な刺激で起こります。

• 寒冷蕁麻疹: 冷たいものに触れたり、寒気にさらされたりすることで誘発されます。

• 日光蕁麻疹: 日光を浴びることが引き金になります。

• 温熱蕁麻疹: 温かいお風呂に入るなど、温熱負荷がかかることで起こります。

• コリン性蕁麻疹: 運動や入浴などで汗をかくことが刺激となって現れます。

この事実を知ることは、ただ受け身で症状に苦しむのではなく、ご自身の体を能動的に観察するきっかけになります。この知識は、あなた自身が「自分の体の探偵」になる力を与えてくれるのです。いつ、どんな状況で皮疹が出たか、簡単なメモを取ることをお勧めします。「いつ出た?」「直前に何をしていた?」(例:重い買い物袋を腕にかけていた、熱いお風呂に入った、ジョギングをした)といった記録が、原因を特定する重要な手がかりになります。

 

真実③:いきなり血液検査はしない。診断の基本は「皮疹の観察」から

多くの患者さんは原因特定のために血液検査を期待するかもしれませんが、蕁麻疹の診断において、それは必ずしも第一選択ではありません。

ガイドラインでは、「すべての蕁麻疹症例に対して一律に I 型アレルギーや一般的生化学検査等を行うべきでない」と明確に示されています。検査の数値以上に重要なのが、皮疹そのものの丁寧な観察です。

診断の最大の鍵は、この1点です:

「痒みを伴う赤い盛り上がりが、24時間以内に現れては消える」

この特徴が確認できれば、ほぼ蕁麻疹と診断できます。では、なぜ闇雲に検査をしないのでしょうか。それは、不必要な検査がもたらす不利益を避けるためです。網羅的なアレルギー検査は、偽陽性(実際には原因ではないのに陽性と出てしまうこと)を引き起こし、不必要な食事制限や不安を招くことがあります。また、時間や費用がかかるだけでなく、医師と患者を誤った方向に導き、結果として正しい診断と治療を遅らせてしまう可能性すらあるのです。

 

真実④:治療のゴールは「症状を抑える」ではなく「症状が出ない状態を目指す」こと

蕁麻疹の治療というと、「痒いときだけ薬を飲む」という対症療法をイメージするかもしれませんが、専門的な治療アプローチは異なります。特に、慢性蕁麻疹の治療目標は、より長期的で根本的な視点に基づいています。

ガイドラインが示す治療目標は、二段階で設定されています。

• 第一目標: 治療により症状が現れない状態

• 最終目標: 無治療で症状が現れない状態(治癒)

この目標を達成するために、特に特発性の蕁麻疹(特定の原因がないタイプ)では、症状が出ていない時でも抗ヒスタミン薬の内服を継続することが非常に重要です。これは、目に見える炎(皮疹)だけを消すのではなく、熱を持った熾火(おきび:病気の勢い)そのものを冷ましていくようなアプローチです。症状がないからと自己判断で薬をやめるのは、まだ熱い熾火に風を送るようなもので、**「皮疹の出現を完全に抑制すること」**で病勢そのものを鎮静化させるという戦略から外れ、再燃のリスクを高めてしまいます。

 

 

真実⑤:塗り薬は効かない?治療の基本は「飲み薬」

皮膚の症状だからと、痒み止めの塗り薬やステロイド軟膏に頼りたくなるかもしれません。しかし、蕁麻疹の治療において、それは効果的なアプローチとは言えません。

注!塗り薬/軟膏:昭和の頃からの慣習的に処方されるステロイド軟膏は、効果なし

蕁麻疹は、皮膚の表面(表皮)ではなく、より深い層である真皮に存在する肥満細胞から放出される「ヒスタミン」という物質が原因で起こります。そのため、皮膚の表面に薬を塗っても、原因物質の働きを根本から抑えることは難しいのです。

治療の基本は、原因となっている物質が特定できればそれを除去・回避すること、そして「抗ヒスタミン薬」の内服(飲み薬)です。体の内側からヒスタミンの作用をブロックすることが、最も効果的な治療法となります。

 

真実⑥:「眠くなる薬=よく効く」は大きな勘違い

蕁麻疹の治療薬である抗ヒスタミン薬について、「眠気が強い薬ほど、よく効く」というイメージをお持ちではないでしょうか。これは、多くの人が抱きがちな大きな誤解です。

(眠気の強い=効果が高いというイメージでしかない)

現在の蕁麻疹治療ガイドラインでは、第一選択(Step 1)として推奨されているのは、眠気の副作用が少ない「非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬」です。これらの薬は、日常生活への影響を最小限に抑えながら、十分な効果を発揮するように開発されています。

もし効果が不十分な場合は、別の薬に変える前に、まずその薬を医師の指示のもとで2倍量に増量するのが基本的な治療方針です。かつて使われていた眠気の強い古いタイプの薬は、現在では効果と安全性の観点から第一選択とはされていません。自己判断に頼らず、専門医と相談しながら最適な治療法を見つけることが重要です。

 

真実⑦:唇やまぶたが腫れる「血管性浮腫」

通常の蕁麻疹とは少し異なり、注意が必要な症状があります。それが「血管性浮腫(クインケ浮腫)」です。これは、皮膚の表面ではなく、より深い部分で腫れが起こる状態で、特に以下のような特徴があります。

• 好発部位: 唇、まぶた、頬など、顔面に現れやすい

• かゆみ: 通常の蕁麻疹より少ない場合がある

• 持続時間: 腫れが2〜3日続くことがある

最も注意すべきなのは、この浮腫が喉(気道)に起きた場合です。

気道が腫れることで呼吸困難に陥り、窒息の危険性もあります。

唇やまぶたが急に腫れあがった場合は、危険なサインかもしれないと認識し、速やかにアレルギーの知識をアップデートしている医療機関を受診してください。

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蕁麻疹とその原因&治療法

since 2008 Nagata Clinic

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