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高尿酸血症/痛風の正しい治しかた

 

高尿酸血症とは?

  • 定義:血液中の尿酸値が 7.0 mg/dL 以上になった状態を指します。男女ともに同じ基準値で診断します。

尿酸とは?

  • プリン体という物質が体内で代謝分解されることで生じる最終産物(老廃物)です。

​  (肝臓におけるエネルギー合成、DNA/RNAの処理による分解産物として、プリン体は産出されます)

  • 通常は腎臓から尿として体外に排出されますが、腸管からも排出されます。

​ 

➡プリン体をを含む食品の摂取だけでなく、尿酸のintake(食品+代謝による合成)とoutput(腎と腸管からの排泄)の

バランスが崩れて、出る量よりも入る量が多くなり過ぎることで、血中の濃度があがり、高尿酸血症となります。

高尿酸血症を治療する目的/理由とは?

Q: 痛くなければ/痛くなくなったら治療しなくてもいい?

1. 将来の「大きな病気」を防ぐため

  • 尿酸値が高いまま放置すると、痛風発作(足の親指が激しく腫れて痛む)や、

  • 腎臓病(腎臓の働きが悪くなる)、尿路結石(激しい背部の痛み)、腎結石。さらに心血管病(心筋梗塞や脳卒中)のリスクが

高まることが証明されています。

2. 無症状でも体の中ではじわじわ障害が進むため

  • 多くの人は最初、症状がありません。

  • ですが体の「血管」「腎臓」「関節」などに尿酸がたまって、“静かにダメージ”が進行します。

  • ある日突然、痛みや合併症が現れることも。

3. 生活の質(QOL)を守るため

  • 痛風発作が起きると、激しい痛みで日常生活が送れなくなります。

  • 腎臓病や心臓病になれば、長期の治療や通院・入院が必要になり、QOL(生活の質)が大きく下がります。

4. 早くからの予防・治療が、健康寿命を延ばす

  • 生活習慣を少し見直すだけで、尿酸値や他の生活習慣病も改善します。

  • 早めにコントロールすることで、将来の重い合併症を未然に防げるのです。

まとめ

 高尿酸血症を治療するのは…

  • 「痛みや怖い合併症を遠ざけて、いつまでも健康でいるため」

  • 「自覚症状がなくても“見えないダメージ”を止め、将来のリスクから自分を守るため」

これが一番大きな理由になります。

​高尿酸血症の薬物治療開始基準は?

Q: 血液中の尿酸値が 7.0 mg/dL 以上だと、すぐ薬物治療が必要なの?

  • 過去に痛風発作(2以上)あり・1以上の痛風結節あり → 基本的に薬物治療 + 生活習慣改善治療

  • 症候性でも…

    • 8.0~9.0 mg/dL以上合併症あれば、薬物治療 + 生活習慣改善治療

    • 7.0~8.0 mg/dL → 生活習慣改善治療

合併症とは?

  • 痛風発作:急性発作の43%で尿酸値は正常範囲内、70%で非発作時より尿酸値は低値となり、総合的な診断が重要!
    → 尿酸が関節に沈着して炎症。激痛・赤く腫れる。足の親指の付け根(MP関節)にもっとも好発。

      前兆から24時間以内でピークとなり、深夜から明け方に多い。発作自体は、7~10日程度で自然治癒することが多く、

​   発作後に皮膚がむけること(skin peeling)があります。

 頻度別 発作好発部位

 :最頻部位(50~70%)足の親指の付け根(第1中足趾節関節)

   痛風発作の初回や典型例の約7割はここに発生します。

   症状は激痛・発赤・腫脹が目立ち、歩行困難や夜間の激痛も特徴です。

 :次に多い部位:膝関節・足首関節

   足首と膝は約10%~20%程度でみられます。

   膝は体重負荷・血流滞留などの影響で、痛風発作の好発部位となりやすいです。

 :比較的少ない部位:手関節・指関節・肘・アキレス腱・足の甲

   手首や指、肘、アキレス腱、足の甲でも時に発症頻度は5~10%前後

  • 痛風結節
    → 長期的に尿酸が沈着し、耳や指関節などにしこりができる。

  • 腎障害
    →腎臓に長期的に尿酸が沈着し、

   尿路結石、腎結石、CKD(慢性腎臓病:CKD Stage G3以上

​   (ヨーロッパでは、Stage G2以上)

​   (CKDだけでは、薬物治療を開始しないという専門医もあり)

  • 心血管疾患
    →尿酸が血管内皮機能を障害したり、炎症を起こすことで

   高血圧、動脈硬化、心筋梗塞・脳卒中のリスクを高めます。

 

👉 高尿酸血症は「単なる関節の病気」ではなく、

   「全身病のリスク因子」として重要!

生活習慣改善治療とは?

  • 体重管理:肥満改善が最重要

  インスリン抵抗性により、腎臓での尿酸排泄が低下し、血中尿酸値が上昇

  目標:BMI25未満、体重は無理なく少しずつ減らしましょう

  なぜ?

   尿酸値の低下だけでなく、心血管疾患などの合併症リスクも軽減できます

  • 食事制限

  :プリン体控えめ(レバー・魚卵・肉の内臓など避ける)

  なぜ?​

    尿酸はプリン体代謝の最終産物であるため、プリン体の摂取量を減らすことで、

    尿酸の生成を抑えられます

  :果糖(清涼飲料水、フルーツジュース、エナジードリンク、甘味過多、加工食品)制限

  なぜ?

    果糖は体内で尿酸生成を促進する作用があるため、その摂取を制限することが

    尿酸値の管理に繋がります

  :乳製品はOK(尿酸排泄を促進する作用あり)

​      なぜ?

   乳製品に含まれる特定の成分が尿酸の排泄を促進したり、尿酸生成を抑制したり

   する効果があると考えられています。

  • 飲酒制限:特にビール・日本酒は控える、焼酎
    ​➡ノンアルコール飲料、ときにはプリン体オフのアルコール飲料も適度であれば可!

         アルコール飲料の中でもワインは、増加しにくいともされるので適量であれば可。​

​  なぜ?

​   アルコールは体内でプリン体代謝を亢進させ、さらに尿酸の腎臓からの排泄を妨げる

   作用があるため、尿酸値を上昇させやすく、痛風発作を誘発する最大の原因の一つです

  • ​水分をたっぷり

  1日1.5~2L目安に、こまめに水を飲む。炭酸水(無糖)もオッケー。

  尿路結石の予防にも重要!

  • 運動:有酸素運動(ウォーキングや水泳)。ただし激しすぎる運動は逆効果

  週2〜3回以上のウォーキング、体操など「続けやすい運動」を選びましょう!

  なぜ?

   適度な有酸素運動は、体重管理に役立つだけでなく、尿酸値を下げる効果も期待できます。

   ただし、激し過ぎる運動は一時的に尿酸値を上昇させることもあるため、注意が必要です

 
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薬物療法 とは?

生活習慣の改善だけでは尿酸値が目標に達しない場合や、痛風発作の既往、痛風結節、腎機能障害などの合併症がある場合に薬物療法が開始されます。
 

• 尿酸生成抑制薬:第1選択薬

    種類:アロプリノール、フェブキソスタット(商品名:ザイロリック、フェブリクなど)

     なぜ?
  尿酸を生成する酵素(キサンチンオキシダーゼ)の働きを阻害することで、体内の尿酸生成量を減らし、
  血中の尿酸値を低下させます。フェブキソスタットは、腎機能が低下している患者(GFRが30 mL/min未満)でも
  用量調整によって使用可能です。
 

• 尿酸排泄促進薬:第2選択薬 → 尿酸生成抑制薬だけでコントロール不十分の場合に併用

    種類:プロベネシド、ベンズブロマロン(商品名:ユリノーム)、選択的尿酸再吸収阻害薬ドチヌラド(商品名:ユリス)。

    なぜ?
  腎臓からの尿酸排泄を促進することで、体内の尿酸を減らし、血中の尿酸値を低下させます。

 

注:腎結石のリスクが増加するため、予防のために多めの飲水を推奨します。

注:尿酸結石の既往のある方には、可能な限り尿酸排泄促進薬は避けた方がよいともいわれます。

選択的尿酸再吸収阻害薬:

 種類:ドチヌラド(商品名:ユリス)。

 なぜ?

​  新しい薬であり、上記の薬剤で効果が不十分な場合にのみ検討します。

• 急性痛風発作時の治療薬

    種類:コルヒチン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アイシング(保冷剤)

    ときにステロイドの抗炎症作用の薬(PSL換算:15~30㎎/日 3~5日)

    なぜ?
  これらの薬剤は、痛風発作による炎症と痛みを迅速に抑えるために使用されます。
  尿酸降下薬は、急性痛風発作時には通常開始せず、発作が治まってから開始することが一般的です。
 なぜ? 
  急性期に尿酸降下薬を開始すると、血中尿酸値の変動が炎症を悪化させる可能性があるためです。

目標数値 は?

尿酸値 6.0mg/dL未満を目標値。​痛風結節のある重症例では、3.0~5.0mg/dLを目標値とします。

since 2008 Nagata Clinic

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